図1 1プラッター当たり375Gバイトの3.5インチ型ハード・ディスク媒体を例に,トラック方向と円周方向の記録密度を説明したスライド。
図1 1プラッター当たり375Gバイトの3.5インチ型ハード・ディスク媒体を例に,トラック方向と円周方向の記録密度を説明したスライド。
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図2 今後の技術ロードマップ
図2 今後の技術ロードマップ
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図3 「Dual Stage Actuator」の説明
図3 「Dual Stage Actuator」の説明
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 JEITAが開催した「情報端末フェスティバル2009」で,JEITA 磁気記憶装置市場/技術分科会で委員長を務める小久保哲也氏(日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST) ビジネス統括室 製品企画部 製品企画&ストラテジックマーケティングG マネージャ)は「HDD市場動向『世界,日本市場規模と2011年までの需要見通し』」と題して講演した。同氏は市場動向だけでなく,今後の技術ロードマップについても言及した(Tech-On!関連記事)。新技術の投入を続け,今後も面記録密度の向上が続くとみる。

2011年には面記録密度1Tビット/(インチ)2を超え

 HDDが製品化されて以来,磁気ヘッドや磁気媒体などの技術改善により面記録密度は向上してきた。現在1枚(プラッター)当たり500Gバイトの3.5インチ型ハード・ディスクが登場している。面記録密度に換算すると約400Gビット/(インチ)2である(図1)。現在,HDDでは,ディスク媒体に垂直記録媒体,読み出しヘッドにCPP型TMR素子が利用されている。

 今後も面記録密度は向上し,2009年から2010年にかけて600Gビット/(インチ)2,2011年後半から2012年ごろに1.2Tビット/(インチ)2,2013年から2014年にかけて2.4Tビット/(インチ)2にまで到達すると予測している(図2)。1プラッターの3.5インチ型ハード・ディスクに換算すると,それぞれ,750Gバイト,1.5Tバイト,3Tバイトとなる。1プラッター当たり1Tバイトの3.5インチ型ディスクが登場するのは,2010年末から2011年とみている。

 面記録密度向上を実現するには,ディスク媒体や磁気ヘッド,磁気ヘッドの制御技術などのさらなる改善が必要となる。ディスク媒体であれば,ディスクリート・トラック媒体やビット・パターンド媒体である。書き込み技術には熱アシスト記録やマイクロ波アシスト記録,読み出しヘッドにCPP型のGMRヘッドが投入される見込みである。磁気ヘッドの制御技術としては,「Dual Stage Actuator」がある(図3)。同技術は,磁気ヘッドの位置制御の精度を高めるもの。サスペンション上にピエゾ圧電効果素子(PZT)を搭載して,より微小な位置制御を実行する。「腕に例えると,今まで肩だけしか使っていなかったのを,肘も使い細かく腕を動かすようなもの」(小久保氏)。同じDual Stage Actuator技術でも,PZTを設置する位置により分類できるという。